
- 音の歪(ひずみ)とはどのようなものですか?
- 音の歪の原因は何ですか?
- Audyssey MultEQとは何ですか?
- Audyssey MultEQは他のイコライゼーション技術とどのように違いますか?
- Audyssey MultEQにより音響設計の必要は無くなりますか?
- 何箇所での測定が出来るのでしょうか?
- 推奨される測定箇所はどこですか?
- なぜAudyssey MultEQは私のスピーカーを大型(あるいは小型)と誤認するのでしょうか?
- Audyssey MultEQは測定前にAVレシーバーに何か設定が必要ですか?
- Audyssey MultEQを使用することでスピーカーが過入力となり壊れてしまうことはありますか?
- 正しい測定にはどのような機材を使えばいいですか?
- ターゲットカーブとは何ですか?
- Audyssey MultEQはどのようなターゲットカーブを使いますか?
- Audyssey MultEQはなぜ300Hz以上を補正するのでしょうか?
- スピーカーの結線は正しいのに、なぜAudyssey MultEQは「Phase(位相)誤り」と判断するのでしょうか?
- 製品に同梱されているマイクは較正されているのでしょうか?
- マイクを設置する正しい方法は何ですか?
- トーンコントロールを使うとAudyssey MultEQの設定に影響はありますか?
- Audyssey MultEQはスクリーンの後ろに設置されたスピーカーも補正出来ますか?
- Audyssey MultEQは低い周波数に対してどの程度補正しますか?
- サブウーファーの設置位置が、Audyssey MultEQが検出した距離より近いのはなぜですか?
- Audyssey BassXTとAudyssey ABXは自分のシステムを無理に駆動し、壊してしまうことはありますか?
音の歪(ひずみ)とはどのようなものですか?
あなたはそれぞれのスピーカーからの直接音を聞くだけでなく、リスニングルーム内にある家具や壁からの反射音も同時に聞いています。それぞれの反射音は異なった経路と時間で耳に到達します。
人間の聴覚では直接音と反射音は混ざりあってひとつの音として聞こえます。オリジナルの音はリスニングルームの音響効果で変化され、クリーンな直接音に加えられます。このことをリスニングルームの歪と呼びます。あなたがどの座席で聞くかにより、この歪は全く違う聞こえ方になります。
低い周波数帯域の音は部屋の壁のように平行に並んでいる環境で影響を受けます。音は壁の間で反射することにより、波形は自ら折り重なり、定在波を発生します。
身近な例として長い紐の一方を固定して、他方を素早く上下させると紐が山と谷を作っているような波を形成する事と似ています。
この波のことを定在波と呼び、定在波の山の位置に座ると、こもったような楽器の音やボーカルを聞くことになります。
一方、定在波の谷の位置に座ると、金切り音のような楽器の音と軽い印象のボーカルを聞くことになります。
高い周波数帯域においては、音はコーヒーテーブルや棚、そしてテレビなどで反射します。これらの反射音は異なった時間で耳に到着し、スピーカーからの直接音と混ざりあいます。
その結果としてボーカルは明るすぎか、あるいは鼻声に聞こえ、弦楽器は金属的な音になります。
音源がどのようなものか分からなくなり、音場は広がり定位が失われ、全体としてまとまりがなくなります。
音の歪の原因は何ですか?
歪の原因である異なった時間で到達する反射音の組み合わせはタイムドメインの問題とされています。
タイムドメインにおいては定位と臨場感の問題として、周波数ドメインにおいては音質の低下という問題として現れます。
反射を引き起こすものとしては、部屋の壁のように平行に並んでいる環境、コーヒーテーブル、棚、キャビネット、TV、スピーカーの位置、そして家具などが挙げられます。
Audyssey MultEQとは何ですか?
Audyssey MultEQはどのようなオーディオ機器に対しても効果のある音響補正技術で、広いリスニングエリアで最適な音質を楽しむことが出来る技術です。
Audyssey MultEQは、(1)自動設定、(2)広い視聴環境に対するイコライゼーションという2つの要素で構成されています。
- (1)マイクを使った自動設定を行っている間、Audyssey MultEQはまずシステムに何台のスピーカーが接続されているかを検出します。次に接続されているスピーカーの種類(サテライトかサブウーファーか)を識別し、各チャンネルの絶対極性を確認します。また、それぞれのスピーカーとサブウーファーの最適なクロスオーバー周波数を設定します。
さらにAudyssey MultEQは適切な遅延時間を自動的に設定するために、それぞれのスピーカーとマイクの距離を計算します。最後にAudyssey MultEQはそれぞれのスピーカーのレベルを識別し、トリム(レベル調整)を自動設定します。 - (2)広いリスニングエリアに対するイコライゼーションは、反射音などの相互作用から生じる問題を処理するフィルタを作成するために、リスニングエリア内での複数ポイントでの測定結果を統合します。
Audyssey MultEQは他のイコライゼーション技術とどのように違いますか?
最近のAVレシーバーに搭載されている他の技術と比べて、2つの基本的な違いがあります。
第一にAudyssey MultEQはパラメトリックイコライザー(以下PEQ)を基本としていません。
PEQは特定の周波数を中心値に持つ少数の補正ポイント(バンド数)を使用します。
これらの補正ポイントはリスニングルームの多くの音響的な問題を解決する十分な分解能を持っていません。
またPEQの補正ポイントは相互に影響しあう傾向があることから、ある周波数での補正が近くの周波数帯域に影響し、望まない結果をもたらします。
さらに、PEQのイコライジング技術は無限インパルス応答(Infinite Impulse Response/IIR)と呼ばれるデジタルフィルタの代表的技術で、周波数ドメインのみの補正を行うフィルタです。
PEQフィルタは細かい補正をしようとすればするほど、タイムドメインにおいて「リンギング(音鳴り)ノイズ」や「スメアリング(音の汚れ)ノイズ」を引き起こします。Audyssey MultEQは周波数ドメインにおいてPEQよりさらに高い分解能を得るために数百の補正ポイントを使う有限インパルス応答(Finite Impulse Response/FIR)フィルタをイコライゼーションに使用します。さらにFIRフィルタは周波数ドメインとタイムドメインでの補正を同時に可能にします。一般的にFIRフィルタは非常に多くのCPUパワーを必要とされると考えられていました。しかしAudysseyは特に重要とされている低い周波数帯域により多くのCPUパワーを割り当てるという特別な方法を使うことでこの問題を解決しました。
第二の違いとして、Audyssey MultEQはリスニングエリアの音響的な問題をより正確に補正するイコライジングフィルタを作成するために複数の測定結果をひとまとめにします。
他の大多数の技術はただ一点での測定を行うことから、結果として測定ポジション以外ではイコライジングする前より悪い音響効果をもたらしてしまいます。また、複数の測定結果をひとまとめにする為に平均化を使用する技術がいくつかあります。
平均化の技術はリスニングエリアの一点での測定よりは良いですが、最適な補正を提供するものではありません。例えば、ある測定ポジションで特定の周波数に山があっても、他の測定ポジションではその周波数が谷になっていることがあります。
平均化の手法では山と谷を単に加算することから、結果として問題点は相殺され、何も補正されません。
Audyssey MultEQは複数の測定結果をひとまとめにする際にClustering method(クラスタリングメソッド)という独自の技術を用いることで音響的問題点がより明確に示され、イコライジングフィルタはどの測定ポジションでも適切な補正が行えるようになります。
Audyssey MultEQにより音響設計の必要は無くなりますか?
いいえ、Audyssey MultEQは音響設計が何も行われていない部屋でも音質をかなり向上させますが、適切に音響設計がされた部屋では、Audyssey MultEQの補正が加わることによりどのリスニングポジションでも驚くべき結果をもたらします。
何箇所での測定が出来るのでしょうか?
測定箇所の多さとイコライジングの性能は比例しています。Audysseyは最低でも4箇所、最適な結果を得るには6箇所の測定を推奨します。
最大測定箇所数はAVレシーバーなどに搭載されているメモリー容量により制限され、いくつかの製品では8箇所までの測定が可能です。
推奨される測定箇所はどこですか?
最初の測定箇所はリスニングエリアの中心にする必要があります。
2番目の測定箇所は最初の測定箇所から左に60cm移動させ、3番目の測定箇所は、最初の測定箇所から右に60cm移動させ測定します。
Audyssey MultEQかAudyssey MultEQ XT対応製品の場合、6箇所、あるいは8箇所の測定を推奨します。次の3つの測定箇所としては最初の3つの測定箇所から約60cm前方で測定します。8箇所の測定が可能な場合はさらに最初に測定した中央の箇所から約30cm左右、かつ30cm前方に三角形を形成するような箇所となります。
フロントLRのスピーカーから左右方向にあまり離れた、またはスピーカーより外側の位置での測定は避けてください。このような誤った測定は、高い周波数帯域を正しく測定できず、補正フィルタで不必要な補正の原因になります。
またリスニングポジションが壁を背にした場所にあったとしても、壁に近い位置での測定では低い周波数帯域を正しく測定出来ないため、マイクを最低限30cmは壁から前方に離して測定してください。
なぜAudyssey MultEQは私のスピーカーを大型(あるいは小型)と誤認するのでしょうか?
Audyssey MultEQはスピーカーサイズを大型、あるいは小型と設定はしません。
設定は各AVレシーバーのメーカーが決めることで、決定に使用するロールオフ周波数は各メーカーで異なった周波数値を使用します。
Audysseyは各AVレシーバーのメーカーに対して、ロールオフ周波数として40Hzを使用することを推奨しています。もしスピーカーのロールオフ周波数が40Hz以下であると検出したら「大型」と設定し、40Hz以上のスピーカーは「小型」と設定することを推奨しています。
もしあなたが使用しているAVレシーバーのメーカーがあなたのスピーカーを「大型」と設定したら、クロスオーバー周波数以下の音はサブウーファーに提供されずに失われます。
Audysseyは測定が終わったらスピーカーサイズを手動で「小型」に設定しなおすことを推奨します。
Audyssey MultEQは測定前にAVレシーバーに何か設定が必要ですか?
いいえ、すべてのAVレシーバー内の内部設定は測定中には無視されます。内部設定にはクロスオーバー周波数、チャンネルレベル、遅延量、トーンコントロール、そしてマスターボリューム等が含まれます。
Audyssey MultEQを使用することでスピーカーが過入力となり壊れてしまうことはありますか?
いいえ、Audyssey MultEQフィルタはスピーカーの能力とシステム全体の性能を考慮して計算されます。スピーカーへの過入力を防ぐために、それぞれの周波数での補正の限界が設定されます。
正しい測定にはどのような機材を使えばいいですか?
正しい測定には正しい機材の使用が必要です。測定にはタイムドメインと周波数ドメインを正確に測定することが可能な6mm口径の較正されたマイクとソフトウェアが必要です。
一般的に入手可能な機材やソフトウェアでは正しい測定を行うことが出来ずに、不適切な結果を引き起こします。
例えば、市販のソフトウェアの大多数はただ1ポジションでのマイク測定で、周波数ドメインでの測定のみを行い、タイムドメインでの測定は行いません。
単純なサイン波入りのCDとSPLメーターでの測定も、サイン波は定在波による影響を受けやすい為、適切な方法ではありません。
Audysseyは正しい測定機材をAudyssey MultEQのアルゴリズムと共に提供しています。
ターゲットカーブとは何ですか?
リスニングエリアでの測定が完了すると、Audyssey MultEQはサブウーファーを含めた各スピーカーのチャンネルのフィルタを計算します。
フィルタの役割はリスニングエリア内のそれぞれのスピーカーに対する目標の周波数特性を作ることです。
目標となる周波数特性をターゲットカーブと呼び、いくつもの音響特性とコンテンツを考慮して作られたものです。
Audyssey MultEQはどのようなターゲットカーブを使いますか?
一般的に考えられている20Hzから20kHzまで平坦なターゲットカーブは、必ずしも正しい音を出すとは限りません。
理由の一つとして、スピーカーは低い周波数より高い周波数の方がより指向性を持つという事実が挙げられます。
周波数スペクトルにおいて低い周波数帯と高い周波数帯では直接音と反射音のバランスがかなり異なっていることを意味します。
Audysseyのターゲットカーブ設定は、この問題を軽減するために高い周波数帯域で適切な補正を行います。直接音と反射音のバランスを回復させるために、わずかなロールオフを導入しています。
フラットなターゲットカーブ設定にもAudyssey MultEQフィルタが使われますが、高い周波数でのロールオフは適応されません。このフラットなターゲットカーブの設定は、リスニング位置がスピーカーの非常に近くとなる小さいリスニングルームか、非常に高度な音響設計がされたリスニングルームに適切です。
またAVレシーバーがTHXモードに設定されている場合も推奨され、THXが意図した通りに再イコライジングすることを可能にします。
フロント設定はリスニングエリア全体のために計算をされたAudyssey MultEQフィルタを使用しますが、フロントL/Rのスピーカーには適応されません。
フロントL/Rを測定した値はシステム内の残りのスピーカーのターゲットカーブとして使用されます。
サブウーファーは上記のすべての設定においてフラットに補正されます。
製品の中にはManual設定モードがあります。Manual設定はAudyssey MultEQフィルタを使用しないか、測定結果を全く使用しない従来のパラメトリックイコライザー(PEQ)です。
Audyssey MultEQはなぜ300Hz以上を補正するのでしょうか?
リスニングルームの音場補正は、多くの音響的問題が起こる300Hz以下に対してのみ行うべきと言われています。この考え方は正しく設計されたスピーカーは高い周波数では正しく動作するので補正は不要であるという仮定に基づいています。
この考え方はAudyssey MultEQに対して全く矛盾していません。もしスピーカーが実際に適切に設計されているならば、何の補正も致しません。
この理論を支持する人が見落しがちな事は、例え最高の設計がされたスピーカーであっても、近くのTVや棚のような平らな表面で生じる反射音が高い周波数帯域に影響する点です。
Audyssey MultEQはスピーカーが設計通りの性能を発揮できるように必要に応じて補正を行います。
スピーカーの結線は正しいのに、
なぜAudyssey MultEQは「Phase(位相)誤り」と判断するのでしょうか?
Audyssey MultEQはそれぞれのスピーカーの絶対位相を検知します。あるスピーカーにおいてはクロスオーバーの問題を回避するためにドライバーの内部位相を反転させて設計されるものがあります。
Audyssey MultEQはそれを検知し、エラー表示をします。この表示誤りを回避する最良の方法としては、実際の結線を目視で確認し、結線が正しければ「Skip」を押します。
Audyssey MultEQは単に位相反転の可能性を報告するだけで、自動的に位相を反転することはありません。
製品に同梱されているマイクは較正されているのでしょうか?
はい、6mm口径の業界標準測定用マイクとして較正されたものです。
較正データは正しく測定結果に適応されます。
製品に同梱されたそれぞれのマイクに対する特定の較正カーブを盛り込んだマイクのみを使用することが重要です。
またマイクは上向きで耳の高さに設置することが重要です。
指定のマイク以外はすべて異なった特性を持っており、それらを使用した場合は正しい結果を得ることが出来ません。
マイクを設置する正しい方法は何ですか?
Audyssey MultEQに使用するマイクはすべて較正されており、天井に向けて設置します。
マイクの近くや後ろに立つこと、あるいはマイクを手に持つことはフィルタの性能に影響を与える反射や低音ノイズなどの深刻な測定の問題を引き起こします。
トーンコントロールを使うとAudyssey MultEQの設定に影響はありますか?
Audyssey MultEQはリスニングルームの音響問題を解決します。トーンコントロールを使うことによってフィルタの性能は変わりません。トーンコントロールはリスナーの好みに基づいて音色を変えます。
Audyssey MultEQの優れている点はAudyssey MultEQの無いシステムと比べて、コンテンツに対して正しいトーンコントロールの設定を可能にします。
Audyssey MultEQはスクリーンの後ろに設置されたスピーカーも補正出来ますか?
スクリーンがある状態で測定を行えば、Audyssey MultEQはスクリーンの後ろに設置したスピーカーの為に、スクリーンによる減衰を正しく補正します。
Audyssey MultEQは低い周波数に対してどの程度補正しますか?
これはAudyssey MultEQの特徴的な強さのひとつです。
パラメトリックイコライザーを基本としたリスニングルームの音響補正の技術は、十分な周波数バンドがないか、あるいは低音周波数帯域に対して補正を行うだけの十分なパワーがありません。
Audyssey MultEQは標準的なFIRフィルタを使った技術よりさらに低い周波数において非常に高い分解能を持つ独自の方法でFIRフィルタを使用します。
Audyssey MultEQの分解能は周波数によって変化し、最も必要とする低い周波数帯に対して補正フィルタパワーを割り当てます。
サブウーファーの設置位置が、Audyssey MultEQが検出した距離より近いのはなぜですか?
多くのアクティブサブウーファー(アンプ内蔵型)は内蔵のローパスフィルタを無効にする機能がありません。内蔵のローパスフィルタは信号に遅延を加えており、Audyssey MultEQはこの遅延を検知し、距離として認識します。この問題解決の最適な方法はローパスフィルタをオフすることです(サブウーファーで「LFEモード」と呼ばれていることがあります)。
もしオフにすることが可能でない場合は、ローパスフィルタの周波数を可能な限り最も高い周波数に設定し、設置場所はそのままにしておいてください。Audyssey MultEQは加算された遅延に対して補正し、サテライトチャンネルとの時間差を合わせ、最適な設定を行います。
Audyssey BassXTとAudyssey ABXは自分のシステムを無理に駆動し、壊してしまうことはありますか?
Audysseyの技術者が事前にスピーカーメーカーから提供されるスピーカーの分析を行い、それぞれのスピーカーの能力と限界値を完全にモデル化することが出来るので、Audyssey BassXTとAudyssey ABXは低音再生能力を拡張する際に起こり得る問題を回避するように設計されています。
Audyssey BassXTとAudyssey ABXは最大限の低音拡張処理を行っていますが、駆動可能範囲を逸脱してドライバーを駆動するようなことは決して行いません。
